【熊野古道】3時間で歩ける初心者におすすめの観光コース6選
今回は熊野古道を初めて訪れる方に、おすすめのトレッキングコースを6つご紹介します。和歌山県をはじめ三重県と奈良県の3県にまたがる熊野古道は距離が長く、ルートも様々。その中から、トレッキング初心者や熊野古道を初めて訪れる方におすすめのルートをピックアップしました。
どれくらい険しい道のりなの?距離は?所要時間は?どんな景色が見られるの?などなど、疑問に全てお答えします!初めて熊野古道を歩く人に持ち物や装備のアドバイスも。
熊野古道ってどこにあるの?日帰りはできる?
和歌山県にある熊野三山(熊野速玉大社、熊野那智大社、熊野本宮大社)を目指し、古くから巡礼者が歩いた参詣道のことを「熊野古道」と呼びます。全長はなんと600kmを超え、2004年には世界遺産にも登録されました。現在でも古い社や自然が残っており、多くの方がその神秘さの虜になっています。熊野古道にリトリートに訪れて、人生が変わったという方も少なくありません。
熊野古道のあるエリアは「陸の孤島」と呼ばれており、比較的アクセスの悪い場所にあります。しかし、関西圏(大阪駅など)からは1時間半〜2時間程度で行けますし、東京からは羽田空港ー南紀白浜空港便を使えば1時間で熊野古道近くまで移動できます。訪れるスポットを絞れば、日帰りも可能ですよ。
「全行程を歩くのは体力的にも日程的にも難しい…!けれど、熊野古道を歩いてみたい!」そんな皆さんはぜひ、私たちがおすすめする初心者向けのモデルコースを歩きに、熊野古道へお越しください。
初心者の観光におすすめ!短時間で歩ける熊野古道トレッキングコース
熊野古道は大きく分けて5つのルートに分類されます。
「中辺路(なかへち)」…田辺から那智へ至る、熊野古道のメインとなるルート。
「伊勢路(いせじ)」…伊勢神宮と熊野三山を結ぶルート。
「小辺路(こへち)」…高野山と熊野本宮大社を繋ぐ最短かつ最難関ルート。
「紀伊路(きいじ)」…京都から大阪を経由し熊野三山にいたるルート。
「大辺路(おおへち)」…海沿いに南下するルート。海を一望できるスポットあり。
今回は、中辺路や小辺路の中から約2〜3時間で歩くことができ、大きなアップダウンのないコースを6つご紹介します。
おすすめルート①【中辺路】大門坂~熊野那智大社/那智の滝
最初におすすめするのは、約1時間で歩くことができる大門坂から熊野那智大社までのルート。熊野古道らしい自然たっぷりの道を歩くことができる上、熊野三山の中でも象徴的な「那智の滝」を参拝することができます。
大門坂は石畳が特徴の坂で、入り口から約1.3km(約40分間)の上り坂が続きます。高低差は約100m。苔むした道を歩けば、心がスッと落ち着きます。
登り切ると朱色に塗られた「熊野那智大社」社殿にたどり着きます。参拝してから竹林を抜けて石の階段を降りると…熊野古道の象徴ともいえる「那智の滝」に到着。日本三名瀑の一つであり、落差日本一の滝というだけあって、その迫力は圧巻です。
スタート地点の大門坂には無料の駐車場もバス停もあるため、車で訪れる人にも公共交通機関で訪れる人にも便利なのが嬉しいポイントです。
所要時間
約1時間
距離
約2.7km
難易度
★☆☆☆☆
おすすめルート②【中辺路】大日越(だいにちごえ)〜湯の峰温泉
同じく中辺路にある「大日越」。距離の短さから初心者におすすめのコースです。ただし、少し上りが急なので時間にはゆとりを持ってプランを立ててください。ゴールである湯の峰温泉に到着すれば”入浴できる唯一の世界遺産”「つぼ湯」で疲れを癒したり、「湯筒」でゆで卵を作ったりできるのがこのコースの魅力です。
熊野本宮大社と湯の峰温泉を結ぶルートである大日越は、高低差約240mです。まずは本宮大社から徒歩10分のところにある大斎原(おおゆのはら)へ。大斎原は、かつて本宮大社があった場所です。ここには日本一の高さを誇る大鳥居があります。大鳥居をくぐったら国道を下り、「大日越」の入り口へ。
大日越を登り始めるとすぐに、「月見ヶ丘神社」の祠が見えてきます。まるでトトロの世界に紛れ込んでしまったような、鬱蒼と茂る森の中に佇んでいます。さらに10分ほど進むと「鼻欠地蔵」が、そして下り坂を20分ほど下ると「湯峯王子」があります。湯峯王子の鳥居が見えれば、ゴールの湯の峰温泉はすぐそこです。
車で来る方は、ゴールである湯の峰温泉の駐車場に停めた後、バスでスタート地点の熊野本宮大社へ戻るのがおすすめ。公共交通機関を利用する方は、バスを利用して熊野本宮大社まで行きましょう。
所要時間
約2時間
距離
約3.7km(大日越のみ約2km)
難易度
★★☆☆☆
おすすめルート③【中辺路】滝尻王子~高原/高原熊野神社
少し難易度は上がりますが、雲海を楽しめるルートをご紹介しましょう。
スタート地点は滝尻王子。バス停「滝尻」で下車してください。駐車場もあるので車で訪れる方はそちらを利用してください。
富田川と石船川の合流地点である「滝尻王子」は、かつて熊野三山の霊域のはじまりとされた場所です。スタートしてすぐに急勾配があります。その急勾配の間に、胎内くぐり、乳岩、不寝王子、剣ノ山経塚跡と、見所が4つも。
剣ノ山経塚跡からは平坦な道のりで、25分ほど歩けば高原への車道に合流します。階段を15分ほど歩くと、高原(たかはら)の里に出ることができますよ。車道を少し歩けば高原熊野神社に到着です。
高原熊野神社の社殿は、中辺路で最も古い神社建築と言われています。藤原定家が立ち寄った記録も残っているんですよ。ぜひその歴史を感じてください。
そしてさらに歩くと「高原霧の里」に到着!ここは雲海が楽しめるスポットとしても有名です。狙い目は秋から冬。昼夜の寒暖差が大きく、湿度が高く、風が穏やかな早朝(日の出から1時間以内)を狙いましょう。もちろん、日中訪れても素晴らしい景色を楽しむことができますよ。
高原を訪れたら、1棟貸しの宿「SEN.RETREAT TAKAHARA」で一泊することをおすすめします。自然の音以外聞こえない空間の中で、心落ち着く夜をお過ごしください。
所要時間
約3時間
距離
約3.5km
難易度
★★★☆☆
おすすめルート④【中辺路】三軒茶屋~熊野本宮大社
スタート地点である「三軒茶屋」は、中辺路と小辺路の合流地点。名前の通り、かつては三軒のお茶屋さんがあったそうです。現在は、茶屋に模した休憩所などがあります。そこから約2kmの古道を歩きます。全体的に見るとなだらかな下り坂なので、歩きやすい道と言えます。
途中、少し古道から外れて立ち寄っていただきたいのが展望台。「和歌山県の夕日100選」にも選ばれるほど見晴らしの良いポイントで、大斎原に建つ日本一の大鳥居も上から眺めることができるんですよ。
そこから少し歩くとたどり着くのが「祓殿石塚遺跡」。参詣者が身の穢れを清めたり、道中の安全を祈願した場所とされています。そして、ゴールである熊野本宮大社の少し手前にあるのが「祓戸王子(はらいどおうじ)」。小さな森のようになっているのが目印です。樹齢300年以上と言われる2本の樫の木と石祠があります。さらに進むと熊野本宮大社の裏側にでます。ぐるっと回って正面から入りましょう。
車で訪れる場合はゴールである熊野本宮大社の駐車場に駐車し、バスでスタート地点近くの「平岩口」バス停で下車しましょう。公共交通機関を利用する場合も同様に「平岩口」バス停を利用すれば、三軒茶屋まで徒歩10分〜15分ほどです。
所要時間
約1時間
距離
約4km
難易度
★☆☆☆☆
おすすめルート⑤【中辺路】赤木越(あかぎごえ)
これまでご紹介してきたルートよりも、もう少し長い距離を歩きたい!という方におすすめなのが船玉大社付近から湯の峰温泉に向かう「赤木越」のルート。約7kmの道のりです。
発心門王子のバス停で降りたら、下り坂を5分ほど下ると林道にでます。林道沿いに中辺路方面へ向かうと「赤木越分岐」に着きます。
「赤木越へ」と書かれた標識にしたがって進むと、葛折りの急斜面や階段が待ち受けていますので登りましょう。30分ほどかかります。その急斜面さえ越えてしまえば、残りの道のりは緩やかで歩きやすい道となっていますよ。
スタートから約1時間ほどで到着するのが「鍋割地蔵(なべわれじぞう)」です。さらに20分ほど歩けば、「柿原茶屋跡」に出ます。ここは分岐点となっており、いくつもの道に分かれているので地図などで確かめて湯の峰温泉方面へ向かってください。
ゴールの湯の峰温泉に近づくと、最後は下り坂。特に地面がぬかるんでいる時などは、足元に充分注意してください。赤木越の出口は世界遺産に登録されている温泉「つぼ湯」の横にあります。
車でお越しの場合は、湯の峰温泉駐車場もしくは熊野本宮大社駐車場に駐車し、バスを利用して発心門王子まで行くのが良いでしょう。また、湯の峰温泉をスタート地点とし、逆方向に進むのもおすすめです。
所要時間
約3~4時間
距離
約7.1km
難易度
★★☆☆☆
おすすめルート⑥【小辺路】女人道(高野参詣道)
高野山はかつて女人禁制であったことから、女性は高野山の7つの入り口それぞれにある「女人堂」を詣でるために女人道(にょにんみち)を通ったと言われています。今回ご紹介するのは高野七口を巡るルートです。歴史に思いを馳せながら歩いてみてはいかがでしょうか。女人堂が現存するのは不動坂口のみで、他の入口は女人堂跡となっています。
高野山は標高約1000mの山に囲まれており、女人道を歩くといくつかの山頂を訪れることができるというのもこのルートの魅力です。全ルートを歩くには「不動坂口女人道」をスタートとゴールにして約17kmの道のりをぐるっと一周する必要がありますが、今回はその一部を歩くルートをご紹介します。
今回ご紹介するのは不動坂口から女人道に入り、高野山の一の橋へ抜けるルート。道には「女人道○番」と書かれた木の立て札があるので、迷うことなく進むことができると思います。距離は10km超と長いですが、アップダウンの少ない平坦な道のりなので負担少なく歩くことができるでしょう。
車で訪れる場合は「高野山森林公園」に駐車し、「不動坂口女人堂」のバス停まで歩きましょう。このバス停から、「女人道」の案内板に従って山道に入っていきます。少しわかりづらい案内板なので要注意。民家の間が入り口となっています。入ると鳥居があるのが目印です。道なりに進むと、最初のスポット「不動坂口女人堂」に到着します。女人堂の向かい側には「お竹地蔵尊」という大きなお地蔵様もいらっしゃいます。
そのあとは標高984mの弁天岳を登りましょう。急な登り坂ですが、手すりが整備されていますので助けをかりながら登ります。山頂には朱色の鳥居が連なる「獄弁財天社(だけのべんざいてんしゃ)」がありますよ。また眺望も美しいので、景色を楽しみながら少しここで休憩するのも◎。
下山して道なりに歩くと、「大門口女人堂跡」「龍神口女人堂」「ろくろ峠」「大滝口女人堂跡」を楽しめます。ここで熊野古道のメインルートである「小辺路」に合流!最後の「大峰口女人堂跡」を通って「奥之院」に向かいます。
奥之院(五輪塔)には、杉の巨木に囲まれた数十万基の供養塔や墓石が立っています。「一の橋」「中の橋」、そして「御廟橋」を渡ると灯籠が灯された「燈籠堂」にたどり着きます。その幻想的な空間を、ぜひ皆さんにも味わっていただきたい…!
公共交通機関を利用する場合は、高野山駅からバスで「女人堂」バス停で降りましょう。また、女人道を歩いたあとは、ぜひ高野山の中をじっくりとお参りされることをおすすめします。現在、52ヶ寺が宿坊寺院となっているため、高野山内で宿泊することができますよ。早朝勤行など、宿泊しなければ見ることのできない経験ができます。
所要時間
約3~4時間
距離
約10.7km
難易度
★★★☆☆
トレッキング初心者へアドバイス!どんな服装?何を準備したらいい?
©公益社団法人 和歌山県観光連盟
最後に、安全に楽しく熊野古道を歩くための準備品をご紹介します。今回ご紹介したような数時間で歩くことのできる初心者向けコースを歩くときの装備品ですので、さらに難易度の高いコースを歩く際は、難易度に応じた装備をしていきましょう。
服装
- 速乾性のあるインナー
- 登山用の長袖シャツ&長ズボン
- 厚手の靴下
- 日除け、雨除け、頭部保護のための帽子
- フリースなどの防寒着(冬季)
- +1枚羽織ることのできるウィンドブレーカーなど(秋〜冬)
※綿ではなく、速乾性のある機能性素材を選びましょう。
靴
- 登山靴やトレッキングシューズ(ハイカットのもの)
※怪我防止や疲労軽減のために、靴選びは重要です。具体的にはキャラバンの「C1_02S」や「C4_03」シリーズ、アルトラの「オリンパス」シリーズなどがおすすめ。
持ち物
- リュックサック(宿のアメニティをチェックし、できるだけ中身を軽くしましょう)
- 上下分かれた雨具
- 杖(体力に不安のある人はあると安心)
- タオル
- 昼食、おやつ(飴やチョコなど手軽にカロリーを摂取できるもの)
- 水
- 熊野古道マップ
中辺路を歩くなら訪れたい観光スポット
今回ご紹介したルートのうち、中辺路を通るルートを歩くなら、併せて訪れていただきたい観光スポットがあります。
こちらの記事でご紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
熊野古道沿いのおすすめ宿泊先
また日帰りも可能ですが、せっかく熊野古道を訪れるなら1泊2日〜2泊3日で時間に余裕を持って旅行プランを練るのがおすすめです。特に、トレッキング初心者の方は予想以上に歩くのに時間がかかったり、公共交通機関の本数の少なさのせいでプラン通りにいかないことも多々あります。
熊野古道沿いにはホテルや温泉旅館、ゲストハウスなどさまざまなタイプの宿があります。決して数は多くないので、繁忙期に旅行する方は早めの予約をおすすめします。
熊野古道沿いのおすすめ宿はこちらの記事でご紹介しています。いろんなタイプの宿を幅広くご紹介していますよ。