熊野那智大社と那智の滝|訪ねる前に知っておきたい歴史や見所

2022.04.21

熊野那智大社とは、和歌山県那智勝浦町にある熊野三山の一つです。田辺市の熊野本宮大社、新宮市の熊野速玉大社とともに熊野三山とされ、全国に約4,000社以上もある熊野神社の御本社でもあります。熊野三山を目指す参詣道は「熊野古道」と呼ばれ、世界遺産にも登録されているので、熊野那智大社は世界遺産の一部なんですよ。

今回は熊野那智大社の歴史を紐解くとともに、訪れたら絶対に欠かせない熊野那智大社の見所・名スポットをご紹介します。御朱印情報やアクセス・駐車場情報も!

熊野那智大社とは?歴史や神様、お守りや御朱印は?

熊野三山の一つである「熊野那智大社」の歴史や特徴、世界遺産に登録された理由、祀られている神様についてご紹介!

熊野那智大社のことを知ってから実際に訪れると、より一層楽しむことができますよ。

熊野那智大社の歴史と特徴

▲熊野那智大社

はるか昔、西暦紀元前662年、神日本磐余彦命(初代天皇・神武天皇)の一行が現在の「那智の浜」に上陸したと言い伝えられています。一行が光り輝く山を目指し進んでいくと、那智の滝を発見!「大己貴神(おおなむちのかみ)の御神体」としてお祀りしました。一行を導いたのは3本足のカラス「八咫烏(やたがらす)」であり、先導の役目を終えた八咫烏は石に姿を変え、「烏石」として休んでいると言い伝えられています。

那智にはたくさんの滝がありますが、その中で最も高い滝が那智の滝(那智御瀧)です。「一の瀧」とも呼ばれ、落差133mと日本一の落差を誇る滝です。そのスケールの大きさは圧巻です。熊野那智大社の象徴的な場所であり、那智大社が建造される前から滝周辺には神々が祀られていました。

熊野那智大社の起源は那智の滝を神聖視する自然信仰であるため、熊野三山の熊野本宮大社や熊野速玉大社と比べて社殿が作られたのは遅く、仁徳天皇5年(317年)、山の中腹に社殿を設けたのが熊野那智大社の始まりとされています。当時社殿があったのは、現在熊野那智大社の別宮として那智の滝を祀る、飛瀧神社のある場所でした。

神と仏とを同一視する思想「神仏習合」が広まったことで、熊野那智大社は隣接している如意輪堂(現・青岸渡寺)と一体化。そのため江戸時代、熊野那智大社周辺には数多くの社僧坊舎(神社の世話をするための寺)がありました。

明治時代になり神仏習合が廃されると、熊野本宮大社や熊野速玉大社にあった仏堂は全て廃されましたが、熊野那智大社の如意輪堂は有名な西国三十三所の一つであったためそのまま残り、現在も青岸渡寺(せいがんとじ)として独立しています。

世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」と熊野那智大社

▲熊野古道の風景

2004年に世界遺産に登録された「紀伊山地の霊場と参詣道」ーー熊野古道。日本で初めて文化的景観として世界遺産リストに登録されました。熊野那智大社は、この熊野古道の一部です。

熊野は貴族や武士、庶民まで身分性別を問わず全ての人を受け入れ、救う聖地とされたことから、無病息災、長寿、所願成就などのご利益を求めて、たくさんの人が熊野三山を詣でました。蟻の行列に喩えて「蟻の熊野古道」と呼ばれるほど。平安時代の末期には鳥羽上皇、後白河法皇、後鳥羽上皇などが何度も熊野三山に足を運んだという記録が残っています。

当時、都から熊野三山を詣でるには往復約600km、約1ヶ月の旅程を歩く必要がありました。また、現在と違い命がけの道程だったと言います。それほどまでに過酷な「熊野詣」は、黄泉の国にいき、生まれ変わり現世へ戻ることを意味していました。熊野三山が「蘇りの地」と呼ばれる所以はここにあります。

熊野那智大社には何の神様が祀られているの?

熊野三山である熊野本宮大社、熊野那智大社、熊野速玉大社には、同じ12柱の神様が祀られています。

熊野那智大社の主祭神は熊野夫須美大神(ふすみのおおかみ)すなわち伊邪那美命(いざなみのみこと)です。女性の神様で、「夫須美(ふすみ)」は生成発展を意味する「むす」や「結び」の意味を持ちます。万物の生成・育成を司る神様であることから、農林・水産・漁業の守護神、また縁結びの神様として崇められています。

また、 那智の滝そのものを大己貴命(おおあなむちのみこと)が姿を現した御神体としてお祀りしています。大己貴命は「出雲風土記」に国土創造神として記されている通り、国造りの神として知られています。

御朱印とお守り

「日本第一霊験所」の印が入った熊野那智大社の御朱印、同じ境内にある御縣彦社(みあがたひこしゃ)の御朱印、そして那智御瀧の御朱印をいただくことができます。

期間限定で、特別御朱印が発行されることもありますよ。

また、御朱印ではありませんが、那智の滝の滝水で刷られた墨で一枚一枚書かれた「烏牛王神符」というおふだをいただくこともできます。

熊野那智大社で手に入るお守りには、導きの神である八咫烏の描かれた「勝守」「みちびき守」、延命長寿のご利益がある那智の滝にちなんで「延命水守」などがありますよ。

ここは欠かせない!熊野那智大社の見所

熊野那智大社を訪れたら、必ず訪れていただきたいスポットをご紹介します。有名な「那智の滝」や周辺の観光スポットを徹底解説!

大門坂(だいもんざか)

▲大門坂

まずはメインである熊野那智大社の御本堂と礼堂を詣でるために、杉の並木道にある463段の石段、約600mを登りましょう。この坂は「大門坂」と呼ばれています。

俗界と霊界の境目と言われるのが赤い橋「振ヶ瀬橋(ふりがせばし)」。その横には、南方熊楠が粘菌の研究をした大阪屋旅館跡と、関所跡があります。

橋を渡ると樹齢約800年の「夫婦杉」が見えてきます。高さ54.5m、胸高幹周8.5m、枝梁13mの巨木です。そこから先は樹齢200〜300年ほどの杉並木が続きます。

大門坂駐車場には、熊野那智大社の象徴である八咫烏を冠した「なでしこジャパン記念モニュメント」があり、2011年FIFA女子ワールドカップ優勝とロンドンオリンピック銀メダルを記念して選手たちの足形も展示されています。サッカー好きの方は要チェックです。

登り口まではバスや車を利用してアクセスすることができますよ。

熊野那智大社|御本堂・礼堂

熊野那智大社の御本堂と礼堂は、大門坂を登った標高約500メートルのところに位置します。大門坂を登るのが体力的に難しい場合や、車椅子でも大丈夫!車やバスを使えば御本堂近くまでいくことができます。

社殿は6棟からなり、それぞれに神様が祀られています。右の社殿から

第一殿 瀧宮(大己貴神)

第二殿 証誠殿(家都御子大神)

第三殿 中御前(御子速玉大神)

第四殿 西御前(熊野夫須美大神)

第五殿 若宮(天照大神)

第六殿 八社殿(天神地祗)

となっており、主祭神である熊野夫須美大神は右から4番目の社殿に祀られています。御本堂の手前にあるのが礼堂で、同じく熊野夫須美大神が祀られています。

御縣彦社(みあがたひこしゃ)

那智の滝発見の先導役となった3本足のカラス「八咫烏」が祀られているのが御縣彦社です。本殿に向かって左手にあり、正面には八咫烏の石像がありますよ。

八咫烏は日本サッカー協会のエンブレムにもなっていることから、ご存知の方も多いのでは?良い方向へ導く神様とされています。

烏石(からすいし)と枝垂れ桜

八咫烏が初代天皇を那智の滝に導いたあと、姿を変えたと言われているのが「烏石」です。本殿の庭にあります。室町時代に描かれた那智山宮曼荼羅の絵にも烏石が描かれていることから、その当時から同じ場所にあったことがわかっています。

烏石周辺には美しい枝垂れ桜も植えられているので、3月末から4月初めの桜の季節には必見です。

宝物殿

熊野那智大社には、貴重な文化財が多数残っています。那智大社と朝廷や幕府との関わりを紐解くことができる奉納品、祭具、全国に信者がいたことを示す記録などなど。

宝物殿には刀剣・古鏡・古祭具・参詣曼荼羅・古文書・経塚出土品などが常設展示されているので、熊野那智大社や熊野古道の歴史を垣間見ることができます。

拝観料

大人:300円

小人:200円(小・中学生)

未就学児:無料

開館時間

8:30〜15:30

休館日

水曜日

大樟(くす)胎内くぐり

礼殿横にある大きな樟は、平重盛によって御手植されたと伝わる樹齢850年(推定)の大木。樹高は27m、幹回り約8.5mの大きさです。樟霊社(しょうれいしゃ)とも呼ばれています。

幹にポッカリと大きな穴が空いており、護摩木(300円)や絵馬(500円)にお願いごとを書き、それを持って通り抜けることができます。これは「胎内くぐり」と呼ばれています。

青岸渡寺(せいがんとじ)

「神仏習合」により一大修験道場だった那智一帯。江戸時代までは那智大社と青岸渡寺は同一視されていましたが、神仏習合が廃されたことで別々に。

如意輪観世音菩薩を御本尊とする天台宗のお寺です。日本最古の観音巡礼である西国三十三所の一番最初、「第一番」となっていることから、古来より多くの人が足を運びました。

西国三十三所とは総距離約1000㎞、和歌山をはじめ2府5県にわたる三十三箇所の観音霊場です。閻魔大王が世の中で苦しむ人々を救うため、観音菩薩の慈悲の心に触れる巡礼を勧めたことが由来とされています。永延2年(988年)に花山法皇が西国33ヶ所観音巡り1番札所として定めました。

現在残る本堂は国の重要文化財に指定されており、天正18年(1590年)に豊臣秀吉が再建したものです。

那智御瀧(那智の滝)

那智の代表的な名所ともいえる「那智御瀧」。古来より自然信仰の対象となっていた滝です。

那智には「大雲取越」と呼ばれる800m級の山々が連なっており、そこから流れ落ちる水がたくさんの滝となっています。その中で最も高いのが那智御瀧。「一の瀧」とも呼ばれています。日本三大名瀑の一つで、世界遺産の一部であると同時に、上流に流れる「二の瀧」「三の瀧」とともに国指定名勝にも選ばれています。

高さ133m、銚子口の幅13m ・瀧壺の深さは10m以上あり、流下する水量は毎秒1トン程度!落差日本一の滝です。

瀧壺には不老不死の仙薬が沈められているとされることから、古来より那智の滝の水は延命長寿の水として知られており、今日も多くの方が水を求めて参拝されます。「お瀧拝所舞台」と呼ばれる滝を正面から見ることのできる場所もあり、滝の水をいただくこともできるんですよ。

ここまで来たなら是非、熊野の自然信仰の始まりとなった那智の滝を間近で見てみてください。

「お瀧拝所舞台」参入料

大人:300円

小中学生:200円

未就学児:無料

拝観時間

​​9:00~17:00

熊野那智大社別宮 飛瀧神社(ひろうじんじゃ)

熊野那智大社の別宮であり、那智の滝そのものを祀る神社が「飛瀧神社」です。滝が大己貴神が現れた御神体としてお祀りしています。

滝そのものを祀っているため、本堂や拝殿のない珍しい神社で、滝を直接拝みます。熊野那智大社御本堂から飛瀧神社までは徒歩で階段を下り約15分です。

どうやっていくの?熊野那智大社へのアクセス

JA紀伊勝浦駅より、熊野那智大社までトレッキングを楽しみたい場合は約2時間半ほどなだらかな登り坂を歩けば到着します。

もう少し歩く距離を短くしたい場合や、直接御本殿まで行く場合のアクセスについては下記を参考にしてください。

大門坂を登る場合

バス

JR「紀伊勝浦駅」より熊野御坊南海バス「那智山行き」乗車(所要時間:約20分)

バス停「大門坂」下車。

大門坂を登る(2.7km、所要時間:約1時間)

※バスは午前6時台から午後6時台の運行となっているので、時間にお気をつけください。

運賃

430円

大門坂駐車場を利用し駐車。同じく大門坂を約1時間で登ります。

駐車場住所

〒649-5302 和歌山県東牟婁郡那智勝浦町市野々3034-2

所要時間

和歌山県田辺市より約1時間45分

紀勢自動車道(無料区間)「すさみ南IC」より約1時間10分

料金

無料(予約不要)

本堂近くまで直接行く場合

バス

JR「紀伊勝浦駅」より熊野御坊南海バス「那智山行き」乗車(所要時間:約30分)

バス停「那智の滝前」もしくは「那智山」下車

運賃

630円

※バスは午前6時台から午後6時台の運行となっているので、時間にお気をつけください。

「神社駐車場」を利用し駐車。神社の境内近くの駐車場なので、お年寄りやお子様連れでも安心してご利用いただけます。

住所

〒649-5301 和歌山県東牟婁郡那智勝浦町那智山1

所要時間

和歌山県田辺市より約1時間45分

紀勢自動車道(無料区間)「すさみ南IC」より約1時間10分

料金

800円(神社防災道路通行料として)

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