熊野古道の歴史に迫る!「熊野九十九王子」って何?おすすめのコースもご紹介
熊野古道を歩くと、あちこちに「王子」「王子社」と名前のついた場所があります。現在では王子跡として石碑のみとなっている場所や、社が建てられている場所など形は様々ですが、歴史を感じられるスポットです。
本記事では、「王子」にはどんな歴史があるのか、熊野九十九王子の全リスト、「王子」をめぐるおすすめ観光ルート(トレッキングコース)をご紹介します。
王子って何?
熊野古道沿いを歩くと、「王子」と名前のついたスポットがいくつもあります。そもそも、「王子」とは何なのでしょうか。
12世紀から13世紀にかけて、上皇や貴族たちがこぞって熊野詣(熊野古道を歩き、熊野三山を参ること)に出かけていました。当時の熊野詣は現代とは異なり、命がけの行程。往復するのに1ヶ月もの時間を要しました。
上皇や貴族の熊野詣先達を務めていたのは修験者たちでした。修験者たちは道中の守護を祈るために、地元民が在地の神を祀るために立てていた社を「王子」として認定し、神社として整備したと考えられています。
その数は熊野古道沿いに100箇所以上と言われており、「数多」を意味する九十九をつけて「九十九王子(くじゅうくおうじ)」と呼ばれています。
熊野古道の歴史や、世界遺産に選ばれた理由について詳しく知りたい方はこちらの記事も参考にしてください。
熊野古道沿いの王子を全部ご紹介!九十九王子一覧
熊野古道沿いには101の王子があると言われています。大阪府から順に、和歌山県の那智勝浦までを順番にご紹介しましょう。
1 | 窪津王子 | 21 | 長岡王子 | 41 | 蕪坂塔下王子 | 61 | 上野王子 | 81 | 十丈王子 |
2 | 坂口王子 | 22 | 地蔵堂王子 | 42 | 山口王子 | 62 | 津井(叶)王子 | 82 | 大坂本王子 |
3 | 郡戸王子 | 23 | 馬目王子 | 43 | 糸我王子 | 63 | 斑鳩(富の川)王子 | 83 | 近露王子 |
4 | 上野王子 | 24 | 中山王子 | 44 | 逆川王子 | 64 | 切目王子 | 84 | 比曽原王子 |
5 | 阿倍王子 | 25 | 山口王子 | 45 | 久米崎王子 | 65 | 切目中山王子 | 85 | 継桜王子 |
6 | 津守王子 | 26 | 川辺王子 | 46 | 津兼(井関)王子 | 66 | 岩代王子 | 86 | 中ノ河王子 |
7 | 堺王子 | 27 | 中村王子 | 47 | 河瀬王子 | 67 | 千里王子 | 87 | 小広王子 |
8 | 大鳥新王子 | 28 | 吐前(吐崎)王子 | 48 | 東の馬留王子 | 68 | 三鍋王子 | 88 | 熊瀬川王子 |
9 | 篠田王子 | 29 | 川端王子 | 49 | 沓掛王子 | 69 | 芳養王子 | 89 | 岩神王子 |
10 | 平松王子 | 30 | 和佐王子 | 50 | 西の馬留王子 | 70 | 出立王子 | 90 | 湯川王子 |
11 | 井ノ口王子 | 31 | 平緒王子 | 51 | 内ノ畑王子 | 71 | 秋津王子 | 91 | 猪鼻王子 |
12 | 池田王子 | 32 | 奈久知王子 | 52 | 高家王子 | 72 | 万呂王子 | 92 | 発心門王子 |
13 | 麻生川王子 | 33 | 松坂王子 | 53 | 小中王子 | 73 | 三栖王子 | 93 | 水呑王子 |
14 | 近木王子 | 34 | 松代王子 | 54 | 比井王子 | 74 | 八上王子 | 94 | 伏拝王子 |
15 | 鞍持王子 | 35 | 菩提房王子 | 55 | 松原王子 | 75 | 稲葉根王子 | 95 | 祓戸王子 |
16 | 鶴原王子 | 36 | 藤代王子 | 56 | 善童子王子 | 76 | 一ノ瀬王子 | 96 | 湯ノ峯王子 |
17 | 佐野王子 | 37 | 藤白塔下王子 | 57 | 愛徳山王子 | 77 | 鮎川王子 | 97 | 浜王子 |
18 | 樫井(籾井)王子 | 38 | 橘本王子 | 58 | 九海士王子 | 78 | 滝尻王子 | 98 | 佐野王子 |
19 | 厩戸王子 | 39 | 所坂王子 | 59 | 岩内王子 | 79 | 不寝王子 | 99 | 浜の宮王子 |
20 | 信達一ノ瀬王子 | 40 | 一壷王子 | 60 | 塩屋王子 | 80 | 大門王子 | 100 | 市野々王子 |
101 | 多富気王子 |
五体王子とは?
九十九王子の中でも「藤代王子」「切目王子」「稲葉根王子」「滝尻王子」「発心門王子」の5つは五体王子(ごたいおうじ)として知られ、重要な王子とされています。
これは熊野三山(熊野本宮大社、熊野那智大社、熊野速玉大社)に祀られている五所王子と呼ばれる神々全てを祀る神社であることが理由です。一般的な王子は、いずれか1体のみを祀っています。
どの王子が五体王子なのかについては諸説ありますが、現在では先ほどご紹介した5つを五体王子とするのが一般的です。
有名な「王子」をめぐるおすすめのハイキングコース
100箇所以上ある王子を全てまわるのは大変…。
そこで今回は1泊2日で7つの王子をまわることのできるおすすめのルートをご紹介します!このルートは、熊野古道の中でも「中辺路(なかへち)」と呼ばれるコースの一部です。
<1日目>
JR紀伊田辺駅
↓ 徒歩30分
三栖王子(みすおうじ)
↓ 徒歩35分
八上王子(やがみおうじ)
↓ 徒歩40分
稲葉根王子(いなばねおうじ)
↓ 徒歩2時間10分
滝尻王子(たきじりおうじ)
↓ 徒歩1時間30分
高原熊野神社
↓ 徒歩5分
「SEN.RETREAT TAKAHARA」で宿泊、「霧の郷たかはら」で温泉に浸かる
1日目は紀伊田辺駅をスタート地点とし、4つの王子をめぐります。中でも滝尻王子は、熊野の神域の入り口とされた重要な王子社です。
稲葉根王子と滝尻王子の間は距離が長いため、ここでランチ休憩するのがおすすめ。
「高原熊野神社」は熊野古道沿いに残るもっとも古い神社で、色鮮やかな社殿と樹齢1000年の大楠が見所です。この辺りは雲海がみられるスポットとしても有名なので、運が良ければみられるかも!?
1日中歩いて疲れた身体は「霧の郷たかはら」の温泉と、「SEN.RETREAT TAKAHARA」の食で癒しましょう。この宿では、地元の食材を使ったBBQやお鍋を楽しむことができます。1棟貸切の宿なので、他の人の目を気にすることなく滞在できるのもいいところ。夜には満天の星をみながら、焚き火を囲んで語り合う…なんてこともできますよ。
<2日目>
宿を出発
↓ 徒歩1時間30分
十丈王子(じゅうじょうおうじ)
↓ 徒歩2時間
牛馬童子像
↓ 徒歩10分
熊野古道なかへち美術館
↓ 徒歩1分
近露王子(ちかつゆおうじ)
↓ 徒歩1時間
継桜王子(つぎざくらおうじ)、野中の一本杉
↓ 徒歩すぐ
とがの木茶屋
↓ 徒歩すぐ
野中の清水
↓ 徒歩20分
「野中の一本杉」バス停
↓ バス乗車1時間20分
JR紀伊田辺駅
2日目は3つの王子をめぐります。このルートは平坦な道のりが多く歩きやすい上に、見所がたくさんあります。
十丈王子は杉林の中にひっそりと佇んでいるので、見落とし注意!
「熊野古道なかへち美術館」は「金沢21世紀美術館」を設計したことで知られる建築家ユニットSANAA(妹島和世+西沢立衛)が最初に手がけた美術館。主に、中辺路出身の画家・野長瀬晩花や渡瀬凌雲の作品が展示されています。
近露王子は九十九王子の中でも最も早い時期に整備された王子だと言われています。この辺りは熊野詣をする人たちの休憩所となっており、食事処や民宿も多くある地域です。
継桜王子にある野中の一本杉は、推定樹齢800年とも言われている巨杉群です。まるで熊野本宮大社に向かってお辞儀をしているかのように、熊野本宮大社のある方向にだけ枝を伸ばしています。
とがの木茶屋周辺は春には桜、秋には紅葉が楽しめるスポット。営業日は限られているので、ここに立ち寄りたい!という方は予め公式Facebookで営業日をチェックしておきましょう。
「日本名水百選」の一つにも選ばれている「野中の清水」。きっと、かつては熊野古道を歩く人たちの貴重な給水スポットだったのでしょう。昔と変わらない景観を残す熊野古道を、はるか昔に思いを馳せて歩いてはいかが?
各王子のアクセスは下記の通り。
三栖王子:和歌山県田辺市下三栖1518(地図)
八上王子:和歌山県西牟婁郡上富田町岡1337(地図)
稲葉根王子:和歌山県西牟婁郡上富田町岩田2988-2(地図)
滝尻王子:和歌山県田辺市中辺路町栗栖川859(地図)
十丈王子:和歌山県田辺市中辺路町大内川1307(地図)
近露王子:和歌山県田辺市中辺路町近露901(地図)
継桜王子:和歌山県田辺市中辺路町野中(地図)
各スポットの詳しい情報は、こちらの記事でもご紹介しています。