熊野古道の歴史に迫る!「熊野九十九王子」って何?おすすめのコースもご紹介

2022.08.31

熊野古道を歩くと、あちこちに「王子」「王子社」と名前のついた場所があります。現在では王子跡として石碑のみとなっている場所や、社が建てられている場所など形は様々ですが、歴史を感じられるスポットです。

本記事では、「王子」にはどんな歴史があるのか、熊野九十九王子の全リスト、「王子」をめぐるおすすめ観光ルート(トレッキングコース)をご紹介します。

王子って何?

熊野古道沿いを歩くと、「王子」と名前のついたスポットがいくつもあります。そもそも、「王子」とは何なのでしょうか。

12世紀から13世紀にかけて、上皇や貴族たちがこぞって熊野詣(熊野古道を歩き、熊野三山を参ること)に出かけていました。当時の熊野詣は現代とは異なり、命がけの行程。往復するのに1ヶ月もの時間を要しました。

上皇や貴族の熊野詣先達を務めていたのは修験者たちでした。修験者たちは道中の守護を祈るために、地元民が在地の神を祀るために立てていた社を「王子」として認定し、神社として整備したと考えられています。

その数は熊野古道沿いに100箇所以上と言われており、「数多」を意味する九十九をつけて「九十九王子(くじゅうくおうじ)」と呼ばれています。

熊野古道の歴史や、世界遺産に選ばれた理由について詳しく知りたい方はこちらの記事も参考にしてください。

熊野古道沿いの王子を全部ご紹介!九十九王子一覧

熊野古道沿いには101の王子があると言われています。大阪府から順に、和歌山県の那智勝浦までを順番にご紹介しましょう。

1窪津王子21長岡王子41蕪坂塔下王子61上野王子81十丈王子
2坂口王子22地蔵堂王子42山口王子62津井(叶)王子82大坂本王子
3郡戸王子23馬目王子43糸我王子63斑鳩(富の川)王子83近露王子
4上野王子24中山王子44逆川王子64切目王子84比曽原王子
5阿倍王子25山口王子45久米崎王子65切目中山王子85継桜王子
6津守王子26川辺王子46津兼(井関)王子66岩代王子86中ノ河王子
7堺王子27中村王子47河瀬王子67千里王子87小広王子
8大鳥新王子28吐前(吐崎)王子48東の馬留王子68三鍋王子88熊瀬川王子
9篠田王子29川端王子49沓掛王子69芳養王子89岩神王子
10平松王子30和佐王子50西の馬留王子70出立王子90湯川王子
11井ノ口王子31平緒王子51内ノ畑王子71秋津王子91猪鼻王子
12池田王子32奈久知王子52高家王子72万呂王子92発心門王子
13麻生川王子33松坂王子53小中王子73三栖王子93水呑王子
14近木王子34松代王子54比井王子74八上王子94伏拝王子
15鞍持王子35菩提房王子55松原王子75稲葉根王子95祓戸王子
16鶴原王子36藤代王子56善童子王子76一ノ瀬王子96湯ノ峯王子
17佐野王子37藤白塔下王子57愛徳山王子77鮎川王子97浜王子
18樫井(籾井)王子38橘本王子58九海士王子78滝尻王子98佐野王子
19厩戸王子39所坂王子59岩内王子79不寝王子99浜の宮王子
20信達一ノ瀬王子40一壷王子60塩屋王子80大門王子100市野々王子
101多富気王子

五体王子とは?

九十九王子の中でも「藤代王子」「切目王子」「稲葉根王子」「滝尻王子」「発心門王子」の5つは五体王子(ごたいおうじ)として知られ、重要な王子とされています。

これは熊野三山(熊野本宮大社熊野那智大社熊野速玉大社)に祀られている五所王子と呼ばれる神々全てを祀る神社であることが理由です。一般的な王子は、いずれか1体のみを祀っています。

どの王子が五体王子なのかについては諸説ありますが、現在では先ほどご紹介した5つを五体王子とするのが一般的です。

有名な「王子」をめぐるおすすめのハイキングコース

100箇所以上ある王子を全てまわるのは大変…。

そこで今回は1泊2日で7つの王子をまわることのできるおすすめのルートをご紹介します!このルートは、熊野古道の中でも「中辺路(なかへち)」と呼ばれるコースの一部です。

<1日目>

JR紀伊田辺駅

↓ 徒歩30分

三栖王子(みすおうじ)

↓ 徒歩35分

八上王子(やがみおうじ)

↓ 徒歩40分

稲葉根王子(いなばねおうじ)

↓ 徒歩2時間10分

滝尻王子(たきじりおうじ)

↓ 徒歩1時間30分

高原熊野神社

↓ 徒歩5分

SEN.RETREAT TAKAHARA」で宿泊、「霧の郷たかはら」で温泉に浸かる

1日目は紀伊田辺駅をスタート地点とし、4つの王子をめぐります。中でも滝尻王子は、熊野の神域の入り口とされた重要な王子社です。

稲葉根王子と滝尻王子の間は距離が長いため、ここでランチ休憩するのがおすすめ。

「高原熊野神社」は熊野古道沿いに残るもっとも古い神社で、色鮮やかな社殿と樹齢1000年の大楠が見所です。この辺りは雲海がみられるスポットとしても有名なので、運が良ければみられるかも!?

1日中歩いて疲れた身体は「霧の郷たかはら」の温泉と、「SEN.RETREAT TAKAHARA」の食で癒しましょう。この宿では、地元の食材を使ったBBQやお鍋を楽しむことができます。1棟貸切の宿なので、他の人の目を気にすることなく滞在できるのもいいところ。夜には満天の星をみながら、焚き火を囲んで語り合う…なんてこともできますよ。

<2日目>

宿を出発

↓ 徒歩1時間30分

十丈王子(じゅうじょうおうじ)

↓ 徒歩2時間

牛馬童子像

↓ 徒歩10分

熊野古道なかへち美術館

↓ 徒歩1分

近露王子(ちかつゆおうじ)

↓ 徒歩1時間

継桜王子(つぎざくらおうじ)、野中の一本杉

↓ 徒歩すぐ

とがの木茶屋

↓ 徒歩すぐ

野中の清水

↓ 徒歩20分

「野中の一本杉」バス停

↓ バス乗車1時間20分

JR紀伊田辺駅

2日目は3つの王子をめぐります。このルートは平坦な道のりが多く歩きやすい上に、見所がたくさんあります。

十丈王子は杉林の中にひっそりと佇んでいるので、見落とし注意!

「熊野古道なかへち美術館」は「金沢21世紀美術館」を設計したことで知られる建築家ユニットSANAA(妹島和世+西沢立衛)が最初に手がけた美術館。主に、中辺路出身の画家・野長瀬晩花や渡瀬凌雲の作品が展示されています。

近露王子は九十九王子の中でも最も早い時期に整備された王子だと言われています。この辺りは熊野詣をする人たちの休憩所となっており、食事処や民宿も多くある地域です。

継桜王子にある野中の一本杉は、推定樹齢800年とも言われている巨杉群です。まるで熊野本宮大社に向かってお辞儀をしているかのように、熊野本宮大社のある方向にだけ枝を伸ばしています。

とがの木茶屋©︎公益社団法人 和歌山県観光連盟

とがの木茶屋周辺は春には桜、秋には紅葉が楽しめるスポット。営業日は限られているので、ここに立ち寄りたい!という方は予め公式Facebookで営業日をチェックしておきましょう。

「日本名水百選」の一つにも選ばれている「野中の清水」。きっと、かつては熊野古道を歩く人たちの貴重な給水スポットだったのでしょう。昔と変わらない景観を残す熊野古道を、はるか昔に思いを馳せて歩いてはいかが?

各王子のアクセスは下記の通り。

三栖王子:和歌山県田辺市下三栖1518(地図

八上王子:和歌山県西牟婁郡上富田町岡1337(地図

稲葉根王子:和歌山県西牟婁郡上富田町岩田2988-2(地図

滝尻王子:和歌山県田辺市中辺路町栗栖川859(地図

十丈王子:和歌山県田辺市中辺路町大内川1307(地図

近露王子:和歌山県田辺市中辺路町近露901(地図

継桜王子:和歌山県田辺市中辺路町野中(地図

各スポットの詳しい情報は、こちらの記事でもご紹介しています。

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