桜に銀杏に美術館!世界遺産・熊野古道「中辺路」観光スポット10選
昔も今も、訪れる人が絶えない世界遺産「熊野古道」。
熊野古道は、和歌山県にある熊野三山(熊野本宮大社、熊野那智大社、熊野速玉大社)を目指して巡礼者たちが歩いた巡礼の道を指します。いわゆる「熊野詣」のコースである霊言あらたかな参詣道は、現代においてもパワースポットとして注目され、全国から多くの人が足を運んでいます。
今回ご紹介するのは、熊野古道のメインルートの一つである「中辺路(なかへち)」沿いにある観光スポット。中辺路は田辺付近から熊野三山に至るルートです。熊野古道館や滝尻王子、牛馬童子、近露王子、野中などなど、中辺路を訪れるなら見逃せない名所ばかりです。
今回は中辺路のスタート地点であるJR紀伊田辺駅付近から、熊野本宮大社に向かう道のりのスポットを道順でご紹介します。
「熊野古道」についてもっと知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
清姫の墓
中辺路沿いには、伝説「道成寺物語」の清姫にまつわるスポットがいくつもあります。清姫の墓のある中辺路町真砂は清姫の生誕の地だと言われており、清姫生誕地 真砂一族住居跡の碑も近くに建てられています。
藤原左衛門之尉清重と清重が黒蛇から助けた「白蛇の化身」の間に誕生したと言い伝えられる清姫。清姫は熊野詣にやってきた奥州白河の安珍という僧に恋をしてしまいますが、結婚することが叶わず、清姫は大蛇に姿を変えて道成寺の鐘の中に隠れた安珍を焼き殺したという伝説が残っています。
清姫の墓から北へ2kmほど歩くとある「福巌寺(一願寺)」にも足を伸ばしてみてください。ここには「清姫堂」があります。
このお寺の境内にある地蔵尊は「一つの願いを必ず叶えてくれる」と言われていることから「一願寺」と呼ばれています。また、「ながながと如来のまねも今日限り」との辞世の句を残し、本堂で坐死した和尚が好んだ”からし”とお酒を供えると願い事が一つ叶うと言われていることから、「からし地蔵」との愛称でも親しまれています。
住所
清姫の墓:〒646-1415 和歌山県田辺市中辺路町真砂374−1
福巌寺(一願寺):〒646-1414 和歌山県田辺市中辺路町西谷575
アクセス
清姫の墓:JR「紀伊田辺駅」からバス約30分、「清姫」バス停下車徒歩2分
福巌寺(一願寺):清姫の墓から徒歩35分
駐車場
清姫の墓:あり(無料、10台)
福巌寺(一願寺):あり
公式サイト
福巌寺(一願寺):https://www.ichiganji.com/
滝尻王子(たきじりおうじ)
熊野古道沿いを歩くと、「王子」と名前のついたスポットがいくつもあります。これは、12世紀から13世紀にかけて、当時の地元民が在地の神を祀るために立てていた社に修験者たちが熊野詣での途中に立ち寄り、儀式を行っていた場所。修験者たちは上皇や貴族の熊野詣先達を務めていたことから、道中の守護を祈るために整備されたと考えられます。
その数は100箇所以上と言われており、「数多」を意味する九十九をつけて「九十九王子(くじゅうくおうじ」と呼ばれています。その中でも「滝尻王子」は特に格式の高い五躰王子のひとつで、ここから先は神域とされました。
滝尻王子は富田川(とんだがわ)と石船川(いしぶりがわ)の合流点にあります。「滝尻」という名前は、石船川の急流が富田川に注いでいるため滝のようであることに由来すると言われていますよ。
住所
〒646-1421 和歌山県田辺市中辺路町栗栖川859
アクセス
JR「紀伊田辺駅」から龍神バス40分、滝尻バス停下車
駐車場
熊野古道館の駐車場を利用(無料、80台)
熊野古道館
「滝尻王子」の向かいにあるのが「熊野古道館」。中辺路の観光案内と歴史が知れる休憩施設です。12角形の可愛らしい屋根が目印。町内に12の王子があることからこの形になったそうです。
熊野古道を歩く前に、熊野古道館へ立ち寄って歴史や文化を学ぶのがおすすめ。古道を見る目が変わりますよ。
営業時間
9:00~17:00(休館日:年末年始)
入館料
無料
住所
和歌山県田辺市中辺路町栗栖川1222
アクセス
JR「紀伊田辺駅」からバス40分、滝尻バス停下車すぐ
駐車場
あり(無料、40台)
高原熊野神社
「高原熊野神社」は熊野古道沿いに残るもっとも古い神社で、色鮮やかな社殿と樹齢1000年の大楠が見所です。楠の大きさには驚くこと間違いなし!熊野古道のパワースポットとしても人気ですよ。
明治時代に神仏習合でこの神社もなくなりかけたそうですが、なんとか免れて今に至ります。奇跡によって現代まで残った高原熊野神社にぜひ足を運んでみてください。
近くには、運が良ければ雲海がみられるスポット「高原霧の里休憩所」も。夕日などの眺望も美しいので、併せて訪れることをおすすめします。
また、この辺りで宿泊施設を探しているなら2022年にオープンしたばかりの「SEN.RETREAT TAKAHARA」がおすすめ!熊野古道を歩く人のための無人宿で、周りの目を気にすることなく滞在できます。熊野の旬の食材を使ったBBQも楽しめますよ。
住所
〒646-1416 和歌山県田辺市中辺路町高原1120
アクセス
JR「紀伊田辺駅」からバス44分「古道ヶ丘」バス停下車徒歩約30分、または「滝尻」バス停下車徒歩1時間45分。
上富田ICから車で約30分。
駐車場
「高原霧の里休憩所」駐車場を利用。(無料、15台)
福定の大銀杏
田辺市の宝泉寺境内にあるのが「福定の大銀杏」。なんと樹齢400年、高さは22m、幹の周囲は5.3mにもなるそう!田辺市の天然記念物に指定されています。根元から高さ4メートルで幹が数本に分かれていることから、「千本銀杏」とも呼ばれています。
毎年10月下旬~11月中旬頃は、この大銀杏の紅葉を楽しむことができるとあって全国から多くの方が訪れます。遠くからみてもすぐに見つけられるほどの存在感です。また、紅葉した黄金色の葉が落ちてできる絨毯も見所。
ぜひこの大銀杏をみながら、熊野古道を歩いてみてください。
住所
〒646-1432 和歌山県田辺市中辺路町福定
アクセス
JR「紀伊田辺駅」からバス約50分、「氏山橋」バス停下車徒歩約10分。
阪和自動車道「南紀田辺IC」から車で約45分。
駐車場
あり(無料、10台)
牛馬童子像(ぎゅうばどうじぞう)
箸折峠に残る「牛馬童子像」は幼い花山法皇の姿をしのんで作られたもので、とっても愛らしいフォルム!田辺市指定史跡に選ばれています。
明治時代に作られた像で、高さたったの50cmほど。中辺路のシンボル的存在です。近くには、田園風景を一望できる東屋があるのでこちらも要チェック。
箸折峠は、花山法皇が熊野詣に訪れて食事をとるため休憩した際、近くに生えていた萱を折って箸にしたことからその名がつけられたと言われています。
住所
〒646-1402 和歌山県田辺市中辺路町近露1940
アクセス
JR「紀伊田辺駅」よりバス分、牛馬童子口バス停下車。
駐車場
近露王子公園駐車場を利用。(無料、35台)
熊野古道なかへち美術館
熊野古道の見所は自然や史跡だけではないんです!
中辺路沿いにある「熊野古道なかへち美術館」は、国際的に活躍する建築家ユニットSANAA(妹島和世+西沢立衛)が最初に手がけた美術館。「美術作品を新しい空間で見せ、アートを通じた交流の場を生み出す」という構想のもと設計されました。有名な「金沢21世紀美術館」もSANNAの代表作なんですよ。
中辺路出身の画家・野長瀬晩花や渡瀬凌雲の作品を中心に館蔵。定期的に特別展も開催されています。
牛馬童子像から約500mのところにある美術館なので、ぜひ併せて訪れてみてください。
営業時間
10:00〜17:00(入館は16:30まで)
休館日
毎週月曜日(ただし月曜日が祝日・振替休日のときはその翌日)
祝日の翌日(土・日曜日を除く)
12月28日〜1月4日
観覧料
館蔵品展260円、小企画展200円、特別展はその都度定める。(18歳未満・学生は無料)
住所
〒646-1402 和歌山県田辺市中辺路町近露891
アクセス
JR「紀伊田辺駅」から龍神バス約60分「なかへち美術館」バス停下車。
「南紀白浜空港」・JR「田辺駅」・JR「新宮駅」から明光バス「快速 熊野古道号」乗車、「なかへち美術館」バス停下車。
(紀伊田辺駅より約1時間。南紀白浜空港より約1時間50分。新宮駅より約1時間30分)
駐車場
無料・26台
公式サイト
https://www.city.tanabe.lg.jp/nakahechibijutsukan
近露王子
牛馬童子像から熊野古道なかへち美術館を経て、近露王子に至るルートは約1.3kmほどで、トレッキング初心者や体力に自信がない方が歩くのにおすすめのコースです。
数多くある王子の中でも、近露王子は初期の頃に建てられたと言われています。現在は石碑が残るのみとなっていますが、鬱蒼と茂る木々に囲まれて雰囲気のある場所。
徒歩1分のところに「箸折茶屋」という食事処・足湯があります。朝7時から営業しているので、早朝散歩の際にモーニングをいただくもよし、お土産を買うもよし、トレッキングで疲れた足を癒すのもよし。併せて訪れてみてください。
住所
〒646-1402 和歌山県田辺市中辺路町近露901
アクセス
熊野古道なかへち美術館から徒歩1分
駐車場
熊野古道なかへち美術館駐車場を利用(無料・26台)
継桜王子社(つぎざくらおうじ)/野中の一方杉/野中の清水
近露王子から熊野本宮に向かって中辺路を1時間ほど歩くと、「継桜王子」に到着します。その境内には、「野中の一方杉」と呼ばれる杉の巨木群が。県の天然記念物に指定されています。
なんと推定樹齢800年、幹の周囲は最大8mもあるんです。巨木群が「一方杉」と呼ばれている理由は、全ての杉が熊野那智大社のある方向(南)にだけ枝を伸ばしているから。その姿はなんとも神秘的です。
現存する杉の巨木は現在8本ですが、明治時代の神社合祀で廃社となり森が伐採される前には40本ほどあったそう。その姿を一度みてみたかった…!実際に老木の空洞に入ることもできますよ。大人が20人ほどが入ることのできる大きな空間です。
毎年11月3日、1月2日、3日には野中の獅子舞が行われます。約700年の歴史を持つお祭りをぜひご覧ください。
野中の一方杉を訪れたら、50mほど進んだところにある「とがの木茶屋」にも立ち寄ってみてください。茅葺き屋根や囲炉裏があり歴史を感じられるお店で、熊野の郷土料理をいただけますよ。名物は「茶がゆ」!
春には桜、そして新緑、秋には紅葉が見られるスポットでもあります。築250年を越える建物は、江戸時代から熊野詣の旅人を泊めていた宿場だそうです。
昭和60年(1985年)に「日本名水百選」に選ばれた「野中の清水」は、野中の一本杉の真下に位置します。(歩くと徒歩15分ほど)
野中の清水は昔から熊野古道を歩く人たちの給水スポットとなってきました。現在も地元の人たちの貴重な飲料水・生活用水として利用されています。今まで一度も枯れたことのない湧水です。
営業時間
とがの木茶屋:8:00~16:00
住所
継桜王子社:〒646-1401 和歌山県田辺市中辺路町野中
とがの木茶屋:和歌山県田辺市中辺路町野中393
アクセス
JR「紀伊田辺駅」からバス84分、野中一方杉バス停から徒歩20分。
阪和自動車道「南紀田辺IC」から車で約60分
駐車場
野中の清水駐車場を利用(無料・3台)
秀衡桜(ひでひらざくら)
継桜王子社から100mのところにあるのが「秀衡桜」。奥州の藤原秀衡が熊野詣に訪れた際、滝尻の岩屋に残したわが子の無事を祈念して、そこにあった桜を手折り、別の木に継いだものだと言われています。現存する桜は何度か植え継がれたものです。
ソメイヨシノよりも開花時期が遅く、4月中旬ごろまで楽しめる桜です。
ここには秀衡にまつわる伝説が残されています。
なかなか子どもに恵まれなかった秀衡でしたが、熊野詣のおかげで妻が身篭ったため熊野にお礼参りに出かけることに。継桜王子社に達したところ、臨月ではないにもかかわらず子供が生まれます。「山上にある胎内くぐりの大きな岩屋で産み、熊野を詣でよ」とのお告げを受けてその通りにし、手折った桜を差して「参詣の帰りまでにこの桜が咲いていたら無事だ」と願い熊野本宮を参りました。参拝後急ぎ戻ると、桜は生き生きと咲いていて、子どもは岩から滴る白い乳を飲んでふくふくと育っていました。
秀衡の伝説
住所
〒646-1401 和歌山県田辺市中辺路町野中
アクセス
JR「紀伊田辺駅」からバス84分、野中一本杉バス停から徒歩5分
駐車場
野中の清水駐車場を利用(無料・3台)