熊野速玉大社とゴトビキ岩|訪ねる前に知っておきたい歴史や見所
熊野速玉大社は、和歌山県新宮市にある熊野三山の一つです。那智勝浦町の熊野那智大社、本宮市の熊野本宮大社とともに熊野三山とされ、全国に約4,000社以上もある熊野神社の御本社でもあります。熊野三山を目指す参詣道は「熊野古道」と呼ばれ、世界遺産にも登録されているので、熊野速玉大社は世界遺産の一部なんですよ。
今回は熊野速玉大社の歴史を紐解くとともに、訪れたら絶対に欠かせない熊野速玉大社の見所・名スポットをご紹介します。御朱印情報やアクセス・駐車場情報も!
熊野速玉大社とは?歴史や神様をご紹介
熊野三山の一つである「熊野速玉大社」の歴史や特徴、世界遺産に登録された理由、祀られている神様についてご紹介!
熊野速玉大社の歴史や見所を学んでから訪れると、より一層楽しむことができますよ。
熊野速玉大社の歴史と特徴
『熊野権現御垂迹縁起』などの書物によると、神倉山のゴトビキ岩に熊野の神々が降臨し、景行58年に現在の場所に神々を祀るための宮が建てられたと言われています。その際、ゴトビキ岩の「元宮」に対して、「新宮」と名付けられました。
最初は二つの神殿に熊野速玉大神、熊野夫須美大神、家津美御子大神が祀られていましたが、平安時代の初めごろには現在と同じように十二の神殿が完成し、12柱の神々が祀られるようになっていたといいます。『熊野権現垂迹縁起』だけでなく『一遍上人聖絵』などにも御社殿が丹塗りで描かれていることから、当時から現在のように鮮やかな朱色の社殿であったことが推測できます。
日本書紀には、神武天皇が神倉山に行幸されたことが記されていることからもわかるように、古来より神倉山には自然そのものを崇める自然信仰が根付いていました。
熊野速玉大社の社訓には「濡れわら沓の入堂」というものがあります。かつて、熊野古道を歩き熊野速玉大社を参詣した人々を、熊野速玉大社の神々に使えていた方々は暖かく迎え入れました。参詣者のわらじが雨で濡れていても拝殿に迎え入れたことに由来してこの社訓が定められました。
世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」と熊野那智大社
2004年に世界遺産に登録された「紀伊山地の霊場と参詣道」ーー熊野古道。日本で初めて文化的景観として世界遺産リストに登録されました。熊野速玉大社は、この熊野古道の一部です。
熊野は貴族や武士、庶民まで身分性別を問わず全ての人を受け入れ、救う聖地とされたことから、無病息災・長寿・所願成就などのご利益を求めて、たくさんの人が熊野三山を詣でました。その様子は、蟻の行列に喩えて「蟻の熊野古道」と呼ばれるほど。平安時代の末期には鳥羽上皇、後白河法皇、後鳥羽上皇などが何度も熊野三山に足を運んだという記録が残っています。
当時、都から熊野三山を詣でるには往復約600km、約1ヶ月の旅程を歩く必要がありました。また、現在と違い命がけの道程だったと言います。それほどまでに過酷な「熊野詣」は、黄泉の国にいき、生まれ変わり現世へ戻ることを意味していました。熊野三山が「蘇りの地」と呼ばれる所以はここにあります。
熊野速玉大社には何の神様が祀られているの?
熊野三山である熊野本宮大社、熊野那智大社、熊野速玉大社には、同じ12柱の神様が祀られています。
熊野速玉大社は、水の動きを神格化したとされる熊野速玉大神(くまのはやたまのおおかみ)と熊野夫須美大神(くまのふすみのおおかみ)を主祭神としています。夫婦神であることから、縁結びの神社としても多くの方が訪れます。
御朱印とお守り
熊野速玉大社の御朱印、神倉神社(熊野速玉大社の飛地境内摂社)の御朱印の2種類を受けることができます。その年の干支に合わせたデザインの特別御朱印もありますよ。
御朱印ではありませんが、熊野牛王宝印(くまのごおうほういん)と呼ばれるおふだも受けることができます。烏を絵文字化したカラス文字で書かれており、熊野三山それぞれで違うデザインのものを入手することができます。病気平癒、災難除けとして長く親しまれてきました。
熊野速玉大社のご神木であるナギは、葉が切れにくいことから絆を結ぶ存在として尊ばれてきました。そのため、速玉大社では「なぎ守」「なぎ人形」といったお守りを受けることができますよ。
ここは欠かせない!熊野速玉大社の見所
熊野速玉大社を訪れたら、必ず訪れていただきたいスポットをご紹介します。
熊野速玉大社 拝殿
鮮やかな朱色の社殿が特徴の拝殿には第一殿(結宮)と第二殿(速玉宮)があり、主祭神である熊野速玉大神(くまのはやたまのおおかみ)と熊野夫須美大神(くまのふすみのおおかみ)が祀られています。二つの宮殿の右隣には、三神殿、上三殿、八社殿が並びます。
表参道沿いには神武天皇による熊野の地発見を先導したと言われる八咫烏をお祀りした「八咫烏神社」と、人間の筋肉による力を神格化した手力男命を祀る「手力男神社」もあるので、こちらも参詣しましょう。
熊野神宝館
熊野速玉大社には国宝に指定されている神宝を約1200点所蔵しています。中には、室町時代に足利義満公が奉納したと伝えられる調度品も!熊野の歴史を学ぶにはぴったりの場所です。
拝観料
大人:500円(高校生以下無料)
開館時間
9:00〜16:00
休館日
無休(2022年3月現在、老朽化に伴う修繕のため閉館中)
梛(ナギ)の大樹
境内にそびえるのは、樹齢1000年とも言われているナギの大樹です。ナギは熊野権現の象徴として尊ばれてきました。このナギの葉を懐中に納めてお参りすることが習わしとされています。
およそ18mの大木で、ナギとしては日本最大級の大きさです。「熊野速玉神社のナギ」として、国の天然記念物に指定されています。
神倉神社 ゴトビキ岩
熊野速玉大社から徒歩約17分のところ、権現山(神倉山)の南端にある神倉神社のゴトビキ岩は、熊野の神々が最初に舞い降りた場所だと言い伝えられています。その後、舞い降りた神々は熊野速玉大社に迎えられ祀られたので、神倉神社は「元宮」、熊野速玉大社は「新宮(にいみや)」と呼ばれるようになりました。
ここが熊野信仰の原点ともいえる場所なので、熊野速玉大社を訪れるなら神倉神社は必ず訪れていただきたいスポットですが、訪れる際は、歩きやすい靴と体力が必要かも。鳥居から538段の急な階段が続くので標高は約80mと低いですが、登るには少し体力がいるのです。その絶壁を登りきれば、大きな巨岩が迎えてくれます。参道の鎌倉積みの石段は源頼朝の寄進だと伝わっています。
「ゴトビキ」とは、地元の方言でヒキガエルのことを意味しており、巨岩の形から連想されたと考えられています。
この神倉神社には有名な「お燈祭り(おとうまつり)」というお祭りがあります。毎年2月6日に2,000人近い男性が松明を持ちながら石段を駆け下りるお祭りです。参加者は白装束で腰に荒縄を巻いた「上(あが)り子」と呼ばれ、山門が開くと同時に一気に駆け下りる迫力ある上り子の姿を見に、多くの方が訪れます。(コロナ禍では関係者のみで実施)
住所
和歌山県新宮市神倉1-13-8
アクセス
新宮駅より徒歩約15分、熊野速玉大社より徒歩約17分
どうやっていくの?熊野速玉大社へのアクセス
電車・バス
JR新宮駅から徒歩圏内にあるので、電車でお越しの場合はこの駅を目指しましょう。
新宮駅までは、新大阪駅から特急くろしおに乗って約4時間半、名古屋駅からは特急南紀に乗って約3時間半です。
所要時間
- JR新宮駅から徒歩20分
- JR新宮駅から熊野交通・三重交通バス乗車「権現前」バス停下車(所要時間:5分)
- JR新宮駅から熊野交通ふれあいバス乗車「速玉大社前」バス停下車(所要時間:5分)
車
車でお越しの場合は、境内近くに無料駐車場がありますので利用しましょう。20台ほどと台数にかぎりがありますが、繁忙期には臨時駐車場が開放されます。
駐車場住所
〒647-0081 和歌山県新宮市新宮1−6(地図)
所要時間
関西方面からは、阪和自動車道~紀勢自動車道「上富田IC」より2時間弱。
名古屋方面からは東名阪自動車道・伊勢自動車道・紀勢自動車道を経て「熊野大泊IC」より40分。
料金
無料(予約不要)