熊野本宮大社と大斎原の大鳥居|訪ねる前に知っておきたい歴史や見所
熊野本宮大社は、和歌山県田辺市にある熊野三山の一つです。那智勝浦町にある熊野那智大社、新宮市の熊野速玉大社とともに熊野三山とされ、全国に約4,000社以上もある熊野神社の御本社でもあります。熊野三山を目指す参詣道は「熊野古道」と呼ばれ、世界遺産にも登録されているので、熊野本宮大社は世界遺産の一部なんですよ。
今回は熊野本宮大社の歴史を紐解くとともに、訪れたら絶対に欠かせない熊野本宮大社の見所・名スポットをご紹介します。御朱印情報やアクセス・駐車場情報も!
熊野本宮大社とは?歴史や神様をご紹介
熊野三山の一つである「熊野本宮大社」の歴史や特徴、世界遺産に登録された理由、祀られている神様についてご紹介!いただける御朱印やお守りについてもお教えします。
熊野本宮大社や熊野古道のことを知ってから訪れると、より一層楽しむことができますよ。
熊野本宮大社の歴史と特徴
熊野詣の中心地である「熊野本宮大社」。周辺には熊野川、音無川、四村川という3つの川が流れており、桜や紅葉の季節には息を呑むほど美しい風景が広がります。また、朝日や夕陽の時間帯には、昼間とは違う幻想的な姿が見られますよ。
『皇年代略記』や『神社縁起』によると、紀元前33年、3本の川の中州である大斎原(おおゆのはら)に社殿が建てられたのが熊野本宮大社の起源です。大斎原のイチイの巨木に3体の月が降臨し、真ん中の月が「私は家都美御子大神(すさのおのみこと)であり、両側の月は伊邪那美命(いざなみのみこと)と速玉之男大神(はやたまのおのみこと)である。社殿をつくり、齋き祀れ」という神勅を与えたことから、大斎原に熊野本宮大社の社殿が創建された、と言い伝えられています。
現在は大斎原から500mほど離れた場所に本宮があります。旧社地である大斎原には日本一の高さの大鳥居が残り、中四社、下四社、境内摂末社の神々が祀られています。
その理由は明治時代の大洪水。それまで本宮には能舞台なども備わっており、今の約8倍の規模でした。しかし明治22年の大洪水により、明治24年に大斎原から上四社が今の場所へ移設されたのです。平成になってからも、紀伊半島大水害により再び大斎原や瑞鳳殿などが甚大な被害を受けましたが、平成26年には瑞鳳殿が再建されるなど復興を遂げています。
熊野本宮大社は上・中・下社の三社から成るため、熊野三所権現と呼ばれたり、十二殿に御祭神が祀られていることから、熊野十二社権現とも呼ばれます。かつては「熊野坐神社(くまのにいますじんじゃ)」すなわち、「熊野にいらっしゃる神」とも呼ばれていました。
世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」と熊野本宮大社
2004年に世界遺産に登録された「紀伊山地の霊場と参詣道」ーー熊野古道。日本で初めて文化的景観として世界遺産リストに登録されました。熊野本宮大社は、この熊野古道の一部です。
熊野は貴族や武士、庶民まで身分性別を問わず全ての人を受け入れ、救う聖地とされたことから、無病息災、長寿、所願成就などのご利益を求めて、たくさんの人が熊野三山を詣でました。蟻の行列に喩えて「蟻の熊野古道」と呼ばれるほど。平安時代の末期には鳥羽上皇、後白河法皇、後鳥羽上皇などが何度も熊野三山に足を運んだという記録が残っています。
当時、都から熊野三山を詣でるには往復約600km、約1ヶ月の旅程を歩く必要がありました。また、現在と違い命がけの道程だったと言います。それほどまでに過酷な「熊野詣」は、黄泉の国にいき、生まれ変わり現世へ戻ることを意味していました。熊野三山が「蘇りの地」と呼ばれる所以はここにあります。
熊野本宮大社には何の神様が祀られているの?
熊野三山である熊野本宮大社、熊野那智大社、熊野速玉大社には、同じ12柱の神様が祀られています。
熊野本宮大社の主祭神は、家津美御子大神(すさのおのみこと)です。家津美御子大神は自身の御毛を抜いて木を育成させた神話から、木の神とされています。「紀伊国」は「木の国」から来ているという説があります。
御朱印とお守り
熊野本宮大社および大斎原(おおゆのはら)の、2種類の御朱印をいただくことができます。毎月、季節に合わせた特別御朱印が発行されています。2月は節分、3月は桜と菜の花というように、季節感あふれるデザインになっています。
また、御朱印ではありませんが、熊野三山それぞれで発行されている熊野牛王神符(牛王宝印)というおふだもあります。カラス文字で書かれた熊野三山特有の御神符で、三社それぞれのデザインなので是非全て訪れて入手してみてください。
熊野の地の発見を先導したと言い伝えられている八咫烏(やたがらす)がデザインされたお守りが多く手に入ります。八咫烏は、日本サッカー協会のエンブレムにも描かれていることから「サッカー守」という変わり種も。
実は、「道」として世界遺産に登録されているのは、熊野古道とフランス・スペインにあるサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路のたった2箇所だけ。
熊野本宮大社では、サンティアゴ・デ・コンポステーラとコラボしたお守りを手に入れることができますよ。デザインは『ジョジョの奇妙な冒険』を描かれた漫画家の荒木飛呂彦先生というユニークなお守りです。荒木先生が何度も熊野古道や本宮大社を訪れているという縁でデザインするに至ったそう。世界中の人々が「和合」するようにとの願いが込められたこのお守りは、今の世界に必要な心を思い出させてくれます。
40年以上、御社殿に使われてきた檜皮を再生しお守りにした「再生守」もありますよ。熊野本宮大社の歴史をひしひしと感じられるお守りです。
なお、お守りは郵送でお送りいただくことができますが、御朱印は訪れた人だけしか授与されません。
ここは欠かせない!熊野本宮大社の見所
熊野本宮大社を訪れたら、必ず訪れていただきたいスポットをご紹介します。
熊野本宮大社 御社殿
参道の鳥居は神域と俗界の境を表しているので、くぐる前に一礼。右端から入り、左端から出るのが作法です。本殿へと続く158段の石段をのぼると、なんとも厳かな桧皮葺きの社殿が見えてきます。これが「熊野本宮大社」。ここには、12柱の神様のうち上四社が祀られています。
左から順に第一殿、第二殿・・・第四殿となっていますが、参拝順序は主祭神である家津美御子大神が祀られている第三殿から第二殿、第一殿、第四殿とお参りするのが作法です。最後に、八百万の神が祀られている満山社をお参りしましょう。
拝観時間
8:00〜17:00
大斎原(おおゆのはら)・日本一の大鳥居
本殿から500メートルほど離れた場所にあり、徒歩10分ほどで行くことができるのが「大斎原」。
日本一の高さを誇る大鳥居は、34メートルの高さ!その大きさに驚くこと間違いなし。春には大鳥居と桜のコラボレーションが楽しめるのでおすすめです。
大鳥居をくぐると、旧本宮大社の地であることを示す二基の石祠が建てられているのが見えるでしょう。左側に中四社下四社、右側に境内摂末社の御神霊が祀られています。
中四社
忍穂耳命・瓊々杵命・彦穂々出見命・鵜葺草葺不合命
下四社
軻遇突智命・埴山姫命・弥都波能売命・稚産霊命
産田社(うぶたしゃ)
熊野本宮大社の本殿から、大斎原に向かう道中にあるのが「産田社」です。八百万の神を生み出したとされている伊邪那美命がお祀りされている神社で、あることから「生みのちから」を感じる場所です。
「産守り」は熊野本宮大社で受けることができますよ。
宝物殿
熊野本宮大社は、たびたびの水害や火災を乗り越えて今に至ります。自然災害をのがれ、現代まで受け継がれてきた経文や曼荼羅、能面など、貴重な宝物を拝観することができます。多くは国や県の重要文化財に指定されています。
拝観料
大人:300円
小人:100円
開館時間
8:30〜15:30(2022年3月現在、拝観中止中)
休館日
不定休(ほぼ無休)
瑞鳳殿(ずいほうでん)
平成23年9月の紀伊半島大水害で被害を受け、平成26年に再建されたばかりの「瑞鳳殿」は、神社の研修施設、参拝者のための休憩所、災害時の避難場所として開放されています。
館内には茶房「珍重菴」、お土産屋「からす屋」、カフェ「cafe alma」の3店舗が営業しているので、ちょっとした休憩やお土産探しに立ち寄ってみるのはいかがでしょう。
八咫烏をイメージして建てられた建築デザインも必見です。
開館時間
9:00〜17:00
館内3店舗は9:00〜16:00
休館日
不定休(ほぼ無休)
「珍重菴」は水曜定休、「からす屋」は不定休、「cafe alma」は火曜定休
八咫烏ポスト
本宮の多羅葉(たらよう)のご神木の下に設置されている珍しい黒い郵便ポストは「八咫烏ポスト」と呼ばれています。多羅葉の葉は傷をつけると黒い線が浮き上がるため、平安時代にはお経を書き記していました。「葉書(ハガキ)」の語源ともなり、郵便の木に制定されています。
黒は全ての色を混ぜ合わせた色であることから尊ばれており、八咫烏の身体の色や、本宮の大地の色も表しています。
熊野本宮大社で受けられる「八咫烏ポスト絵馬」は、そのままポストに投函可能!社務所で「出発の地より心をこめて 熊野本宮」と書かれたスタンプを押してもらえるので、旅の記念に熊野の地からご家族や友人にお手紙を書いてみるのもいいかもしれません。
どうやっていくの?熊野本宮大社へのアクセス
熊野本宮大社へ行くには、バスや車が便利。
かつての参詣道であった熊野古道を歩きたい方は、田辺から中辺路(なかへち)というルートや高野山から小辺路(こへち)というルートを歩くのがおすすめです。
トレッキングにおすすめのコースについては、こちらの記事を参考にしてみてください。
バス
公共交通機関を利用する場合は、バスが便利。出発地別にアクセス方法をご紹介します。
南紀白浜空港から
羽田空港から南紀白浜空港までの往復便は、1日4便運行しています。東京からお越しの場合は飛行機が便利!発着時間に合わせてバスの運行時間が設定されていますが、接続は行っていないので注意が必要です。
下記では本宮大社までバスのルートをご紹介していますが、途中に「滝尻王子」や「牛馬童子」「近露王子」「湯の峰温泉」といった名所に停車します。そこから数時間のトレッキングを楽しむこともできますよ。
南紀白浜空港から明光バス・快速熊野古道号に乗車「本宮大社前」下車(所要時間:3時間10分)
運賃
2,550円
JR紀伊田辺駅から
関西方面からお越しの場合は、新大阪駅から紀伊田辺駅まで電車で向かうルートがおすすめ。その場合は、JR紀伊田辺駅から発着しているバスを利用しましょう。1日5本運行しています。
JR紀伊田辺駅より熊野本宮線バス乗車、「本宮大社前」下車(所要時間:約2時間10分)
運賃
2100円
湯の峰温泉から
湯の峰温泉に宿泊された場合も、バスで熊野本宮大社まで行くことができます。
湯の峰温泉バス停より熊野本宮線バス乗車、「本宮大社前」下車(所要時間:15分)
運賃
310円
高野山から
4月から11月の期間限定ですが、聖地巡礼バスが毎日1便運行されています。9:45に高野山駅前を発車し、本宮大社前バス停に14:22着です。
運賃
5,000円
車
自家用車やレンタカーを利用する場合に利用できる一般駐車場が2つ、お身体の不自由な方が利用できる本殿近くの駐車場が1つあります。
駐車場住所
「樹の里 駐車場」および「瑞鳳殿 駐車場」(地図)
「熊野本宮参拝(河川敷)無料駐車場」(地図)
所要時間
松原JCTより約4時間
紀勢自動車道「上富田IC」より約1時間15分
料金
無料(予約不要)